「先輩は時々ボーッ、としてて。

(…あぁ、神谷さんは先輩の心にいつもいるんだな)って思ったりして…

…羨ましくなります」


カレーを口に運びながら、僅かに口許を綻ばせて新戸くんは笑った。

彼の目に私はそんな風に映っていたんだと、言葉通り「へぇ~」という気分。

新戸くんが見ていても解るくらい態度に出てしまっていたということだ。

それは自分では認めたくなかったけれど、ソコに、私の中に、ちゃんとまだ神谷が残っているんだと再確認させられたようで、少し情けなかった。




「先輩?」

『んー、?』

「…たとえば、俺は。

あなたの心の中のどこに、いますか?」


――いつになく、しっかりした口調だった


ガチャリ、と。

スプーンを皿に置いて体をこちらに向ける。

私の横顔を見つめる瞳を直接見たわけではないけれど、

きっと凄く、



(…真剣な目をしてる)



『、』


チラリ、横目にそれを見れば、やはり。

大きな瞳は真っ直ぐにこちらを向いていて、けれどどこか優しさを含んでいる。

(…心の中のどこ)

彼は私に躊躇いなく訊いたけれど、結構臭い台詞だということを本人は解っているんだろうか?




心の中の…

新戸くんが、私の心の中に…



(…どこ、にいるの?)



胸の奥、その見えない部分を覗いてみた。

でもそこに居て笑っていたのは神谷だった。