余計なこと、とは神谷の件についてなんだろうと思う。
確かに彼がそのことを知っていたのには驚いたけれど、一体何で…―――
『ねぇ、新戸くん。なんで神谷のこと知ってんの?』
少し、いや意図的に、冷ややかな笑顔を浮かべて訊いてみた。
すると新戸くんはギクリと右手を硬直させて、スプーンは皿の中へ直撃落下。
(…動揺しすぎ、顔にですぎ、)
新戸くんに隠し事は絶対に無理だと悟った瞬間だった。
「いや、だから、あれは…」
『あれ、は?』
「…その、」
『その?』
我ながら意地が悪いと思う。責めれば責める程、目線を左右にキョロキョロさせて目の端を掻く新戸くんをみて、私は面白がっている――ドSじゃないか。
勿論、その間も笑顔は絶やさなかった。
「あの、ですね」
『はい、?』
「聞いた、んですよ」
『誰に?』
「それは…―――言えません!!!」
[ごめんなさい]を無限ループで連呼して、新戸くんは頭を下げる。
そこまで素直になられると、こちらも無理に訊きだせないじゃないか。
(…神谷のことを知ってるのは)
何故か夜くんと、私と…リカ。あぁ、なんだ。それならリカに決まっている。彼に訊くまでもなかったと、肯いて納得した。
それにしてもリカさん、夜くんに番号教えちゃうし、新戸くんにも話しちゃうし、口が軽いのにも程がある。
『うん、いいよ。誰に聞いたかわかったから』
「…え、なんで?」
『なんで、そうだなぁ。…ちょーのうりょくぅー?』
仕返しと言わんばかりにおどけて言えば、からかわないでくださいよ、と戸惑う新戸くん。
それにしてもいつから知っていたんだろうと、少しばかり気になった。
こんなに態度に表れやすい彼が“あんなこと”を知ってしまって、知らないふりで隠し通せていたなんて。
(…それに、)
私に対する接し方も、笑顔もちっとも変わらなかった。