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「…せ、んぱい」
『あ、新戸くん』
申し訳なさそうに、私の顔色を伺うように…
躊躇いがちに吐き出された声に振り向く。
視界にはやはり、会釈をしながら唇を僅かに噛んだ新戸くんが居た。
『どうしたの?』
「ここ、空いてますか?」
『うん、空いてるけど…』
学食のトレーを持った新戸くんは私の隣の席を示して、ゆっくりと着席。
「この前は、すみませんでした…」
『…え?』
この前――さて、なんだったか。
記憶の端を辿れば、あった。あの時だ、新戸くんに抱き締められて、私は混乱したまま妙に子供じみた言葉を吐いて突き放してしまった日。
(…ずっと、気にしてたのかな)
私なんかとっくに忘れてしまっていたというのに、なんて律儀なんだろう。
そう思ったのと同時、あの日のことを思い出して少しの恥ずかしさに身を竦めた。
「俺、あの時いきなり…」
『いいよ、全然。気にしないで?』
「でも先輩、困ってたし…
―――余計なこと、言っちゃった、し、」
俯く新戸くんはションボリとスプーンを握った手でカレーをつついた。
横顔。寄せられた眉は切なげで、その大きな瞳が揺れる。
私が原因で彼にこんな表情をさせてしまっているのかと思うと、罪悪感がいやでも背筋をはった。