翼先生も、言ってたな。



“俺のどこが良いんだろう”って。





相手が生徒じゃなかったら、翼先生も強引に引き止めることができたかもしれない。




臆病になってしまっているのは、相手が桃子ちゃんだからだ。



冷めてしまったんじゃないかと思うと、別れたくないと正直な気持ちを伝えられないんだろう。





「ただいま」



「どうだった?ホームルーム!」



笑顔で迎えてくれた直を見て、俺は今日の性教育のホームルームのことを思い出した。



翼先生の電話から、ずっとそのことばかり考えていた。





「良かったよ。みんなわかってくれた。田嶋も、彼氏にちゃんと言うって言ってたよ」



「本当に?!良かったぁ!!先生の想い、通じたんだね」





その場でぴょこぴょこ飛び跳ねる直を見ていると、無性に愛しくなって抱きしめてしまった。




「ちょっといい?このままで」




俺は直をぎゅっと抱きしめた。




ホームルームの緊張感と、翼先生の心配で、充電切れしてたんだ。





「どうしたの?先生、疲れた?」




「ああ。直の顔見たら、こうしたくなった」