直に会いたい一心で、片付けを急ぐ俺に、水谷先生が言った。
「大事にしてくださいね。矢沢さん。あんなにも必死で守り抜いたんですから」
「やっぱり、知ってました??」
水谷先生にはバレてる気がしてたんだよな。
「まぁね。でも、あんなにモテていた新垣先生を落とした矢沢さんってすごいなぁ」
水谷先生は、あの日・・・・・・気を利かせて席をはずしてくれたんだろう。
体育の授業で倒れた直を俺が送って行ったあの日。
あの日、俺は気付いたんだ。
はっきりと。
ぼんやりと感じていた直への想いが、愛なんだと。
「また連れてくださいね。高校に。話したいんで」
「ええ。喜ぶと思います。話しておきますね」
畑中達は、ケータイ片手に女の子達にメールを送っているようだった。
「アドレス交換成功したのね~」
そう呟いた水谷先生の横顔には、少し寂しさがにじんでいるように見えた。
「じゃあ、またな!」
「またね、先生!」
「お疲れ様~」
みんなと別れてから、学校に資料を忘れたことを思い出した。
早く家に帰りたい気持ちを抑え、学校へ向かう。
体育教官室には、岡崎先生がいた。
試験問題を作っている岡崎先生の相談に乗ってから・・・・・・
俺はようやく直の元へ。
車の中で、深呼吸をして・・・・・・
直に伝えたいことを整理した。
うん。
大丈夫。
早く帰ろう。