誰かの代わり、は悲しすぎるから。
「また高校に遊びに行くよ。先生も奥さん大事にな」
生意気にそう言った畑中だけど、俺は素直にその言葉を受け止めることができた。
「ああ。大事にするよ」
大事にする。
かけがえのない人だから。
嘘ついて、後ろめたい気持ちになってから気付くなんてさ。
バカだけど。
水谷先生に対する気持ちは、異性への気持ちじゃなかった。
わかり合える部分が多かったし、話しやすくて、女性であることを忘れるほどに安心できる相手だったんだ。
それなのに、変に意識したり、自意識過剰になってた自分が恥ずかしい。
性別を越えたこの関係を直に理解してもらえないってどこかで感じていたんだ。
だから、隠してしまった。
何年、直を見てきたんだよ、俺。
直は、そんな小さな人間じゃない。
話せばわかってくれたはずなのに。
直が何より嫌がるのは、嘘をついたり、隠しごとをすることなんだよな。
今からでも間に合うかな。
直。
俺、直が大好きだよ。