「話すと少しラクになりました。ありがとうございます」




「いえいえ。本当は教師全員で考えなければいけない問題です。今度、職員会議で話し合いましょう。生徒は、担任とか親とかに話せないから、水谷先生に話すんです。でも、そういう存在ってものすごく大事で。誰にも話せないと本当に辛いですから」




「そう言ってもらえると私も嬉しいですけど。話を聞くだけで、解決してあげられないことも多くてねぇ」




俺は直の言葉を思い出していた。



“いつか生徒に話してね”




七緒のこと、俺の過去の経験を・・・・・・しっかりと伝えなきゃいけないんじゃないか。



誰しもが当事者になるかもしれない。



他人事じゃないんだ。





「ご主人に相談されたりします?」



「私?う~ん。時々話すけど、結構適当な人だから」




そう言いながらも、愛情が顔からにじみ出ているように感じた。




「でも、私には合ってると思うの。新垣先生みたいな人だったら、私は疲れちゃう。毎晩真剣に語り合って、睡眠不足になりそう。うふふ」




そう笑った水谷先生に、俺も笑い返す。





「そうですね。水谷先生も結構熱いですからね」




「バレちゃった?保健室の先生してると、あんまりそういう目では見られないんだけどね」




保健室の先生の重要性は、俺はわかっているつもりだけど、あまりわかっていない先生もいる。



でも、本当に大事な存在。



不登校の生徒や、教室に入るのが怖い生徒は、必ず保健室に助けを求める。



そして、水谷先生に話を聞いてもらって、ラクになる。



なくてはならない場所なんだ。