ひとりで校門に立ち、

待っている間は多分すごくニヤついていたと思う。

口が無意識に吊り上がる。


そんな顔を隠そうとマフラーに顔を埋め、口を覆った。



「恵美!」


黒くて無造作にセットされた髪が風に揺れて、

笑顔で手を振りながらこっちに走ってくる。


「待った?」

白い息を出しながら赤くなった鼻を掻いている。


「そんなに待ってないよ」


" 待ってないよ "

なんて言いつつも、実際は30分くらい待った。


「そっか。良かった」


ほら、こんな無邪気な笑顔を向けられたら

"待った"なんて言えないよ。