真田君のことを考えながら墓地の石段をゆっくり上っていった。

 と、その時、誰かが私の横をさっと通り過ぎた。

 えっ・・・・!

 咄嗟に振り返った。
 「あっ、あの・・・。」
 その人に声をかけたけど、聞こえなかったのかそのまま走っていってしまった。

 今のは・・・、真田君だったような・・・・。

 すれ違いざまに見た曖昧な横顔を思い出してみた・・・・。
 人違い・・・かな・・・?真田君がこんな所に来るわけない・・・か・・・・。
 でも・・・・。

 「ま、いっか!明日聞いてみればいいや!」
 そう自分に言って、石段を上っていった。

 家に帰ってきたら急に竹刀が振りたくなった。
 自分の部屋で動きやすい格好に着替えて竹刀を持って外に出た。

 竹刀を構えて目を閉じた。

 私の高校生活・・・。私の人生・・・。剣道・・・。そして・・・真田君の笑顔・・・・。

 大きく息を吸ってゆっくり吐き出した。
 吐き出す息とともに頭の中から全てが流れていった。

 目を開いて無心で竹刀を振った。

 こうして私の高校生活初日は終了した。