家を離れる日がやってきた。
 家の前に立ってぼんやりしていた・・・。

 寂しげにたたずむ我が家を見ていたら、お父さんお母さんとの思い出が涙とともにあふれ出してきた・・・・。

 「お父さん・・・・うぅっ・・ぐすっ・・・お母さん・・・・ぐすっ・・・。」

 どうして・・・私だけなの・・・・?

 どうして神様は・・・・、私だけから・・・・幸せを奪うの・・・?
 私はこの先・・・、色のない人生を生きていけってことなの・・・?
 笑顔で生きていっちゃいけないってことなの・・・・?

 近くの住宅から家族の笑い声が聞こえてきた・・・・。

 私も・・・あんな風に笑っていたのに・・・・。
 お父さんもお母さんも私も・・・・、みんな笑顔だったのに・・・・。

 ・・・・笑顔・・・・・。

 その時、ふと受験当日に見た彼の笑顔を思い出した。
 幸せでいっぱいな虹色の人生の持ち主・・・・。

 私も・・・・、あんな風に笑えるようになりたい・・・・。
 彼のように・・・、希望に満ちた輝く笑顔で人の心を癒してあげられるようになりたい!
 違う・・・、なりたいんじゃない・・・。
 そうだよ・・・!絶対になってみせる!!!!

 涙を必死でぬぐって、真剣な顔で家を見上げた。

 お父さん、お母さん。私、強くなる!!
 次ここに来る時は、笑顔で戻ってくるって約束する!!
 前だけ見て、必死に生きてみせる!もう絶対に後ろは振り返らない!!

 「詩織、そろそろ行こうか・・・。」
 おじさんが優しく声をかけてくれた。
 「はい。」
 先を歩いて行くおじさんとおばさんをしっかりと見た。
 「おじさん、おばさん!」
 2人は振り返った。
 「どうしたの?詩織。」
 「今日から、よろしくお願いします!!」
 思い切り頭を下げた。そして今できる最高の笑顔で2人を見た。
 2人はにっこりと微笑んでくれた。
 「さあ、行きましょう。」
 「はい!」

 私は負けない!彼のような笑顔を見せられるようになるまでは、絶対に!!