あの子も受験生かなぁ・・・。緊張して中には入れないのかなぁ・・・。
 あぁぁぁ・・・、私ももっと緊張してきたぁぁ・・・。

 右手と右足が両方同時に出そうになる私の前で、その男の子は校門の上に書いてある 「青葉北高等学校」という文字をじっと見上げた。
 その時だった・・・。

 その男の子は・・・・。
 笑顔になった・・・。

 その笑顔は・・・、私が今まで見た笑顔の中で最も輝いて見えた・・・。

 私は思わず立ち止まった・・・。

 う、うそ・・・・・。わ、笑った・・・・・!?

 その子の瞳はまっすぐに「青葉北高等学校」の文字を捉えていた・・・。
 周囲はこんなにざわざわしているのに、あの子の周りだけは時が止まっているようだった・・・。

 「よっしゃっ!!」

 その子はそう声を張って叫び、校舎に入っていった。

 ・・・・・・・・・・・。

 私はしばらくその場に立ち尽くしていた・・・・。

 あの子・・・・笑ってた・・・。
 あんな笑顔・・・・、今までで見たことがなかった・・・。
 夢と希望に満ち溢れた瞳・・・。

 ・・・・・。
 ・・すごいなぁ・・・・。

 「後5分ほどで校門を締めます。受験生の方は急いでください。」
 その声で我に返った私は、駆け足で校舎に入っていった。

 気がついたらさっきまでの緊張が嘘のようにリラックスしていた。