夏休み。ある日の昼下り。

 俺は遥の墓前に立っていた。

 目を閉じて数秒手を合わせた。

 「よっしゃっ!んじゃいってくるっ!」

 石段を駆け下りると詩織が待っていた。

 「お待たせ!いくぞ~。」
 「ねぇ、勇治~、いい加減教えてよ!どこ行くのよ~。」
 「まあまあ、ついて来いって。ついてからのお楽しみだ!」
 「も~・・・・。」
 俺たちは自転車に2人乗りして出発した。

 1軒の民家の前に自転車を止めた。
 「ここは・・・?」

 不安そうな詩織を後目に俺はインターホンを押した。
 「ちょっ、ちょっと!!」

 家の中から女性が出てきた。

 「こんにちは。お久しぶりです。」
 「ゆ、勇治君!?勇治君じゃない!!ちょっと、あなた!勇治君がきてくれたわよ!」
 女性は家の中に向かって叫んだ。

 すると家の中から男性が出てきた。

 「おぉっ!!勇治君!!久しぶりだね!!元気だったか~?」
 「おじさんもおばさんも、お元気そうで何よりです。」
 「遥に会いにきてくれたのかい?」
 「はい。それともう1つ。詩織、こっちきて!」

 詩織が戸惑いながらおじさんとおばさんの前に立った。

 「えっ!?勇治君・・・こ、この子は・・・・一体・・・。」
 おばさんは完全に言葉を失っていた。

 「紹介します。僕の彼女の朝倉詩織です。」
 「あ、あの・・・は、始めまして・・・。あ、朝倉です・・・。」

 おじさんもおばさんも、そして詩織もみんな慌てていた。

 そう、ここは遥の家。俺はおじさんとおばさんに、詩織を会わせるためにここに来た。