ふいに雨がやんだ・・・。

 はっとして上を見ると傘があった・・・。

 「風邪・・・ひいちゃうよ?」

 左を見ると朝倉が傘を差し出していた・・・。
 驚いて咄嗟に顔を背けて涙をぬぐった・・・。

 朝倉は黙って傘を差し出していた・・・。

 俺は後ずさりした。彼女の顔を見ることは到底できなかった・・・。

 「俺はいいから・・・。自分がぬれるよ・・・。」

 それでも朝倉は黙って傘の中に俺を入れた・・・。
 「・・・・・。」
 言葉が出てこなかった。
 彼女は黙ったまま、俺をじっと見つめていた・・・。

 傘に当たる雨音が墓地の静けさをより際立たせていた・・・。

 その時だった・・・。

 「真田君は、間違っていなかったよ。」

 ・・・・・・・!!!

 突然発せられたその言葉が、あまりにも予想外だったために、俺は思わず彼女を見てしまった・・・。
 彼女の目はまっすぐに俺の瞳を捕らえていた・・・。

 その目を見た瞬間・・・・。

 本当に一瞬の出来事だった・・・・。

 俺は彼女の傘を持つ手を引き寄せて、彼女を思い切り抱きしめていた。

 「・・・・・うっ・・・うぅっ・・・・・・。」
 俺は黙ってすすり泣いていた。
 彼女は全く動かなかった。黙って俺のすすり泣く声を聞いていた。

 雨はやむ気配なく降り続いていた・・・。