少女は長い道のりを歩いていた・・・。

 一面雪が降り積もったように真っ白な景色の広がる長い長い道のりを、たった1人で歩いていた・・・。

 それでも、彼女の足取りは軽やかで、幸せを感じさせるものだった・・・。

 彼女は白いセーターを着て、1冊のノートを片手に持っていた。
 そのセーターは彼女の体格からすると、少し大きめのサイズのようだった。

 道の途中で1組の男女に出会った。
 2人はとても幸せそうに会話をしていた。
 「もう安心ね。彼ならきっとあの子を幸せにしてくれるわ。」
 「あぁ、そうだな。あの子のあんな楽しそうな顔は久しぶりに見たよ。」
  
 少女は2人に近づき、声をかけた。
 「お2人も、あちらへ行かれるのですか?」

 2人は彼女を見ると、驚きの表情を浮かべた。
 「き、君は・・・・。」
 男性が少女に声をかけた。女性は何かに気がつき、男性の方を見た。
 「あなた、この子がきっと彼の言っていた子よ。」
 男性も納得したように頷いた。
 「あぁ、きっとそうだ。こんなにあの子にそっくりなのは、彼女しかいない。」

 その時、少女も2人のことを理解した。
 「・・・ということは、お2人は彼女の・・・。」
 2人は黙ったまま、少女に優しく微笑んだ。

 それを見て少女も笑顔になった。
 「でしたら、向かう先は私と同じですね。よければご一緒しませんか?」
 「あぁ、もちろんいいとも。一緒に行こう。」
 「ありがとうございます。」

 女性が少女に優しく語りかけた。
 「間違いはないと思うけど、一応お名前聞いてもよろしいかしら?」
 「はい・・。」
 少女は笑顔で答えた。

 「沢木・・遥です。」

 2人はそれを聞いて笑顔になった。

 「それじゃあ・・・、行こうか・・。」
 「そうですね・・。」
 「はい・・。」

 3人は再び歩き出した・・・。
 長い長い道のりを・・・。

 彼らの心に、もう迷いはなくなっていた・・・。

 彼らは振り向かず、ただ前だけを見て歩き続けた・・・。

 ・・・そう・・・・。
 “今”を生きるあの2人と同じように・・・。