定期テスト初日がやって来た。

 朝食を終えて、歯を磨きに洗面所に行こうとした時、ベルチャイムが鳴った。

 「お~い、詩織~。勇治君来たぞ~。」
 玄関の方からお父さんの声が聞こえた。

 「えっ!?も、もう来たの!?」
 私は慌てて玄関に走った。

 「よっ!おはよう!」
 勇治はお父さんに促されて玄関の中に立っていた。
 「勇治早すぎ~!急いで歯磨きするから、ちょっと待ってて!」
 勇治にそう言って、私は洗面所に走っていった。

 「あら~、あなたが勇治君~?やっと会えたわね~。始めまして~。」
 台所からお母さんが興味深々で玄関に歩いて行った。

 「あっ、は、始めまして!真田勇治です。」
 「あらまぁ~!素敵な子じゃな~い!さぁさぁ、勇治君、そんなところに立ってないでお座りなさいな~。」
 「えっ・・、あっ、あの・・・・。」
 「詩織はまだ準備してるんだから、お茶でも飲んでいくかね?」
 「えぇっ・・、えっと・・、その・・・。」
 「ちょ、ちょっと!お父さんもお母さんもやめてよ!勇治困ってるでしょ!」
 玄関から聞こえてくる会話を聞いて、慌ててお父さんとお母さんを制止した。

 「いいじゃないの、私たちだって勇治君とお話したいんですもの~。ね~、お父さん。」
 「そうだよ~。詩織の彼氏なんだからさ~、色んな事知りたいじゃないか~。それで、勇治君はどこに住んでるんだい?」
 「えっ、ぼ、僕は楠木町に・・・。」
 「あら~、近いじゃな~い。ご家族は?兄弟とかいるの?」

 お父さんとお母さんの怒涛の質問攻撃に、勇治は完全に戸惑っているみたいだった。