明美が帰っていった後、私は1人沢木さんのお墓の前に残っていた・・・。
 あの時、保健室のベッドで見た不思議な夢を思い出していた・・・。

 あの夢の中で、沢木さんに手渡された白いセーターと古ぼけたノート・・・・。
 あれが一体なんだったのかはよく分からない・・・・。
 ・・・だけど・・・・。

 「あれは・・・、どういう意味に・・・受け取ったらいいのかな・・・・?」
 お墓を見つめながら、沢木さんに尋ねるように話しかけた。

 灰色の墓石は沈黙を保ったまま、お墓に飾られた花が少し風に揺れているだけだった・・・。

 「はははっ・・・、そうだよね・・・。」
 お父さんとお母さんの時と同じように、姿勢を正してお辞儀をした。
 「それじゃあ、沢木さん、またね。」
 そう言い残して、お墓に背を向けたその時だった・・・・。

 急に風が強くなって、木々が少しざわめいた。

 はっとして振り返り、もう1度お墓を見た。

 ・・・・・・・!!!
 ・・・・・・・・・。

 一瞬・・・、本当に一瞬だけ・・・・。

 沢木さんが・・・・、笑顔で頷いていたのが見えたような・・・、気がした・・・・。

 しばらくお墓を見つめていたけど、もう何も見えなかった・・・。

 それでも・・・、何かを感じた・・・・。
 その何かは、私の中にある小さな不安をきれいに拭い去っていってくれた・・・。

 私は、自然と笑顔になっていた・・・。

 ・・・・ありがとね、沢木遥さん・・・・。

 今日は雲ひとつない晴天。太陽が最高の笑顔で私を見守っていた。