私が校門まで来ると、彼女は私に近寄ってきて何かを差し出した・・・。

 白いセーターと・・・・、古ぼけたノート・・・・?
 ノートには“英語 3年2組 真田勇治”と書いてあった・・・。

 私はセーターとノートを受け取り、しばらく眺めていた・・・。

 沢木さんはそれを見届けると、もう1度私に微笑みかけ、勇治君の方に歩いていった・・・。

 沢木さんは勇治君の前に立った・・・。
 彼女は、校門上の文字を見つめたままの勇治君に微笑みかけた・・・。

 桜混じりの風が、そっと彼女の長くきれいな黒髪を揺らした・・・。
 その時、沢木さんの口が動いた・・・。

 “ばいばい、勇治”

 声は聞こえなかったけど、口の動きから確かにそう見えた・・・。

 彼女はそう言って、もう1度勇治君に微笑み、彼を通り抜けるように消えていった・・・。

 私はセーターとノートを抱きしめたまま、その場に立ち尽くしていた・・・。

 ・・・・・・・・・・。

 その時、勇治君が私を見つけた・・・。
 私と勇治君の目が合った・・・。

 勇治君は私を見ると、ゆっくりと笑顔になった・・・。

 多くの桜の花びらが、彼の笑顔を彩るように舞い落ちてきた・・・。

 ・・・・勇治君・・・・。
 声を出そうとしたけど、どういう訳か声が出なかった・・・。

 勇治君を見つめていると、彼は笑顔のまま校門を通り抜けていった・・・。

 ・・・あっ、待って・・・!!
 私も、彼を追いかけるように校門を通り抜けようとした時だった・・・。

 強烈な光が目の前をさえぎった・・・。

 ・・・・・きゃっ!!
 思わず目を細めて、セーターとノートを持つ両手で目を覆った・・・。

 私は光に包み込まれた・・・。