次の日の朝、頭痛は昨日よりもひどくなっていた・・・。
 熱っぽさもかなり増していた・・・。

 それでも私は・・・・、学校を休みたくなかった・・・。
 今日はきっと勇治君が来てくれるはずだから・・・・。

 ・・・・勇治君が・・・・。

 頭痛のする頭を小さく振って、昨日の光景を頭から追い払った。

 朝食を終えて立ち上がったところで立ちくらみがした。
 おじさんが慌てて私を支えてくれた。
 「し、詩織!?そ、そんな体で学校行くのか・・・?今日は休んだらどうだ・・・?」
 「ううん・・・、大丈夫・・・。今日は絶対に行かなきゃダメなの・・・。」
 「だけどなぁ、詩織・・・。」
 「詩織~。」

 心配そうなおじさんの声を遮るように、おばさんが声をかけてくれた。
 「ん・・?なに・・・?おばさん・・・。」
 おばさんは私に小さな巾着袋を手渡した。中には解熱剤が入っていた。
 「学校でちゃんと飲むのよ。いいわね?」
 そう言うと、おばさんはやさしい笑顔で私の肩を軽く叩いた。
 「うん。ありがとう、おばさん・・・。じゃあ行ってくるね。」
 まだ不安げなおじさんとおばさんに、できる限りの笑顔を見せて家を出た。

 今日は来る・・・。絶対来る・・・!
 巾着袋を強く握り締めて石段をゆっくり下りていった・・・。

 私のそんな祈りもむなしく、昼休みになっても勇治君は来なかった・・・。

 水飲み場に行って、解熱剤を飲んだ。
 それでもひどくなっていく頭痛と熱っぽさに苦しみながら教室に戻ってくると、クラスはなぜか静かになっていた。

 「朝倉さんも、早く席について。」
 「えっ、あっ、はい・・・。」
 教壇に立っている相田君に声をかけられて、よく分からないまま席に着いた。