「詩織~。」
 一緒に勉強していた典子に声をかけられた。

 「ん~?どうしたの~?」
 「うれしそうな顔しちゃって~。ほんっと好きなんだね~、真田君が~。」
 「えっ!?い、いきなり何!?」
 「何って好きなんでしょ~?真田君のこと~。」
 「そ、そんな!ち、ちがっ!わ、私は・・・・。」
 「あはははっ!慌てちゃってぇ~。詩織は分かりやすいなぁ~。顔も赤くなっちゃってるしさ~。」
 「えぇっ!?ちょ、ちょっと!そんなに見ないでよぉ!」
 典子が私の顔をまじまじと見るから、恥ずかしくなって顔を隠した。

 私って・・・、そんなに分かりやすいのかな・・・。
 考えてることがそのまま顔に出ちゃうってこと・・・・?
 それだと私の気持ち・・・・、勇治君にも気付かれちゃうじゃない・・・・。
 うわぁ~・・・・。は、恥ずかしい・・・・・。ど、どどうしよう・・・・。

 「でもさぁ~、なんか真田君すごく変わったよね~。」
 頭の中がパニックしかけている私とは正反対で、典子は落ち着いた様子で、勇治君の方を見ながら話し始めた。

 「始めの頃とは随分イメージが変わったような気がするんだよね~。最初は大人しい子だと思ってたのに、今やクラスの人気者になっちゃってるもんね~。」
 「はははっ、そうだね~。でも、たぶんあれが本当の勇治君なんだと思うよ。」
 「へぇ~、詩織詳しいんだね~、“勇治”君のこと~。」
 勇治君を見ながら真剣に答える私を、典子はニヤニヤしながら見ていた。
 「ちょ、ちょっと!典子!い、いい加減にしなさい!べ、勉強するよ!勉強!」
 慌ててノートに目を落とした。
 「あははっ!はぁ~い!」
 文字を書こうとするも、心の動揺がそのまま字に出てしまっていた。

 「あー、そうそう。違う違うの。この問題教えてもらいたかったんだよね。」
 典子は数学の教科書を私に見せた。