季節はもう夏。学校は定期テストの時期になっていた。
 テスト期間3週間前からは部活動も休みになり、教室には放課後自習をする生徒が数人残っていた。

 私は勇治君との約束があったから、ここ最近は毎日放課後残って勉強していた。

 とはいえ、勇治君は藤村君や根岸君たちと一緒に勉強していたから、2人で一緒に勉強することはあまりなく、私は典子と一緒なのが普通になっていた。

 あの日以来、勇治君は本当に変わった。
 変わったというよりも、本来の彼の姿に戻ってきたというべきかも・・・。

 クラスのみんなと積極的に会話するようになったし、人間関係も大切にするようになった。

 ・・・なによりも・・・・。

 ほんっ・・・っと、よく笑うようになった!
 それも、誰もが認めるような最高の笑顔で!

 そして、あの笑顔と彼の本来の人間性からすれば当然のことかもしれないけど、彼の周りには自然と仲間が増えていき、彼はクラスの中心的な人物になっていった。
 そんなキラキラしてきた彼に私はいつもドキドキさせられていた。

 その一方で・・・、私はというと・・・・。

 告白は・・・・、まだしていなかった・・・。
 で、でも今は勉強が忙しくて、告白することなんて考えていられなかった。
 ・・・・というのが一応の言い訳・・・・。

 ・・・やっぱり言い訳だよね・・・・。
 いざ告白しようとなると、どうしたらいいのか分からなくて、頭の中が真っ白になって・・・・。
 いつも最後の1歩が踏み出せなかった・・・・。

 剣道であれだけ精神を鍛えてきたのに・・・・。
 恋愛のこととなると、ものすごく臆病になっちゃうんだよなぁ・・・・。
 はぁ・・・・、どうしよ・・・・。

 もどかしい気持ちを抱えながら、今日も藤村君たちと楽しそうに笑って話している勇治君を見つめていた。