外は真っ暗で、どこからか虫の鳴き声が微かに聞こえてきた。
 お寺の前まで移動し、竹刀を構えて目を閉じた・・・。

 考え事で煮詰まった時は、いつもこうしていた・・・。
 竹刀は考え事をしていては振れなかったから、無心になるにはもってこいだった。

 数回深呼吸をすると、思考は徐々に停止していった・・・。
 そっと目を開いて竹刀を振った。

 無心で振り続けた・・・。
 境内には竹刀を振る音だけが響いていた・・・。

 少し汗をかいてきたところで振るのをやめた。
 息も少し上がっていた。

 竹刀を左手におさめて、石段のところまで歩いていった・・・。

 眼下には住宅の明かりが点々と灯っていた・・・。
 「ふぅ~~~。」
 しばらく何も考えずに、その点々と灯る明かりをぼんやりと見つめていた・・・。

 ・・・・・やっぱり・・・・、伝えよう・・・。私の気持ち・・・・。

 おばさんも言っていた通り、大切なのは私の気持ちを真田君に伝えるってことだよね。
 真田君が今どう思っていようとも・・・・。

 私は・・・・、真田君が・・・・勇治君のことが好きなんだから!!

 「ふぁ~~~~~!」
 もう1度大きく息を吐いた。

 姿勢を正して大きくお辞儀をした。

 「よしっ!お風呂入ろっと!」

 夜空のキャンバスに描かれた北斗七星がいつもより輝いて見えた。