「えっ・・・・・。」

 無口な水野君らしい言葉だった・・・・。
 「中学の県大会でお前を始めてみた時からずっと・・・・。」
 「・・・・・・・。」
 「俺はお前に会うために青葉北を受験したんだ。」
 「・・・・・・・。」

 水野君はそれ以上は何も言わずに、ただ私の目をずっと見つめていた。
 圧倒的な迫力を持つその目に捉えられて、私は視線をずらすことのできないまま固まっていた。

 すると、水野君は少し笑顔になった。
 「返事はいつでもいい。気が向いたら教えてくれ。」
 「う、うん・・・・。」
 水野君は歩いて去っていった。

 状況を把握するのに少し時間がかかった。
 少し落ち着いたところで荷物を持ってゆっくり校門へ向かって歩いた。

 家に帰って夕飯を食べていると、おばさんが私に話しかけた。
 「詩織~、悩み事~?」

 はっとしておばさんを見た。気がつくと箸をくわえたまま止まっていた。
 「あっ、う、ううん。な、なんでもないよっ。」
 「ふふふふっ、恋のお悩みかしらね~。」
 おばさんは嬉しそうに私を見た。
 「おやおや~?それは是非聞かせて欲しいもんだな~。」
 おじさんまでニヤニヤしながら私を見た。
 2人とも子供みたいにウキウキしていた。
 「な、なんでもないんだってば!」
 私は慌ててご飯を食べて立ち上がった。
 「ご、ごちそうさま!」
 2人は私を見て笑っていた。

 お風呂に入って部屋に戻った。
 2人ともほんっとにもう・・・・。
 恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちが、ごちゃ混ぜになっていた。

 おじさんもおばさんも私が寂しい思いをしないようにと、いつも気遣ってくれていた。
 夕飯の時には「学校はどう?」「友達は作れた?」と、いつも何か話しかけてくれた。

 本当にやさしい、おじさんとおばさん・・・。
 私も、もっともっと笑顔で恩返ししなきゃね!