それでも別に勉強に支障が出るほどではなかった。特に気にもせず二次関数の平方完成の問題を解いていた・・・。

 足音は6組の教室前で止まった・・・。
 「あ。」
 後ろで声がしたから、手を止めて声のした方を見た・・・。

 「あ。」
 全く同じ言葉を発してしまった・・・。

 そこには朝倉が立っていた・・・。心臓の鼓動が早くなった気がした・・・。

 「予習・・・してるの・・・?」
 「ま、まぁね・・・。」
 「そっか・・・、偉いね・・・・。」
 「・・・・・。」

 問題に集中しようとした・・・。
 さっきまでそこそこ解けていたはずの問題が急に頭に入ってこなくなった・・・。
 朝倉は自分のロッカーの前にしゃがんで、黙ったまま何かしているようだった。

 しばらくして、朝倉は用が済んだのか、立ち上がって教室を出て行こうとした。
 俺は少し胸をなでおろした。ところが・・・。

 「あ、あの・・・真田君・・?」
 びくっとした。朝倉が自分の名前を覚えていたことにも驚いた。
 冷静な顔を取り繕って振り返った。

 「ん?何?」
 「えっと・・・昨日、柏木町の墓地にいなかった・・・?」

 やはり見つかっていたらしい・・・。
 そりゃそうだ・・・。あの場には2人しかいなかったんだしな・・・。

 机に視線を戻しながら答えた。
 「あぁ、うん。少し用があってね・・・。」
 「やっぱそっか。真田君じゃないかなって思って一応声かけたんだよ。聞こえなかったみたいで行っちゃったから、ちょっと不安だったけど合っててよかった。」
 「ははは・・・、ごめん、気がつかなかった・・・。」
 「ううん、気にしないで・・・。」