ふと見ると、右手に持っていた写真がなかった。
 写真は真田君の自転車の前に裏返しで落ちていた。

 真田君がそれを拾おうとしたから、私は慌ててそれを拾った。
 「あ、ありがとね。ま、また来週・・・。」
 真田君は私をチラッと見ると、無言で自転車を走らせていった。

 ・・・ドキドキしていた・・・。
 やっぱり真田君は私には笑ってくれないのかな・・・・。
 ・・・・・沢木・・・遥さん・・・・。
 こんなに自分にそっくりな子がいたなんて・・・・。

 もう1度写真を見た。
 写真の中の真田君は、本当にとてもきれいな笑顔だった・・・。

 私も・・・・、真田君が笑うとこ・・・見たいなぁ・・・・。

 ・・・・・・・。
 ・・・・そうだよ・・・。そうだよね・・・・!!

 私にだってきっと真田君を笑顔にすることができるはずだよ!
 真田君の笑顔を失わせたのが沢木さんの死なら、真田君の笑顔を取り戻すのは沢木さんの笑顔のはずなんだから!
 私が沢木さんに似ているのなら、私が笑顔で接すれば、きっと真田君も笑顔になってくれる!

 新田さん・・・・、ごめんね・・・・。
 真田君に近づかないってこと、約束できない・・・。
 でも、真田君を笑顔に戻して見せるから!
 だって・・・、私も彼の笑顔を見たいから!!

 写真を夕日にかざした。
 写真の中の真田君がよりいっそう輝いて見えた。