私の高校生活は、真田君にまつわる少しの謎を残しながらも、楽しい日々が過ぎていった。

 勉強と部活動の両立は、進学校の青葉北においては、思った以上に難しく、授業で少しずつ分からないところが出てきてしまったものの、さっぱり分からないというものではなかった。

 そうこうしているうちに、あっという間にほぼ1ヶ月が過ぎようとしていた。

 4月下旬に入って、クラスのみんなもそろそろ仲良くなり始めていた。
 私も普段は、佐藤さんを含めて数人の女の子と一緒にいるようになっていた。

 でも・・・、彼は・・・・。
 真田君は違っていた・・・。
 例の友達の男の子が話しかけに来る以外は、ほとんど1人で教科書を読んでいるか、廊下で窓の外を見てぼーっとしているかくらいしかしていなかった・・・。

 あんな人じゃない・・・、はずなのに・・・。
 自分から人間関係を築くのを避けているとしか思えなかった。
 私は友達と話しながら、そんな彼の寂しそうな顔をチラチラと見ていた。

 チャイムが鳴って、井上先生が教室に入ってきた。
 起立、例の後、先生は話を始めた。
 「皆さんの高校生活も、はや1ヶ月を過ぎましたが、どうでしょう、そろそろ高校の授業にもなれてきましたか?」
 授業があんなに忙しいなんて、高校に来て初めて思ったなぁ~。
 「今日は授業の前に席替えをしたいと思います。」
 おっ、席替えか~。それいい提案!

 先生は黒板に網の目を書き始めた。
 網の目を書き終えた先生は、くじの入ったかごを取り出し、それをもってクラス全体を回った。私たちは、かごからくじを1つずつ取った。
 くじをとって中を見た。私の紙には「18」と書いてあった。

 「それでは、私の書いた番号と同じ席に移動してください。」
 そう言って先生は黒板に書いた網の目にランダムに数字を書き込んでいった。