あの日以来、俺は何かあるたびにここに来て、遥に報告している。

 それは、自分だけが生きてしまっているということへの罪滅ぼしなのか、遥が死んだことを認めたくないのか、よく分からない・・・。
 きっとどっちもなんだろう・・・。
 だから今日あの時・・・、朝倉に会ったあの時・・・、あそこまで動揺してしまったんだろう・・・。

 「今日さ、青葉北で・・・。」
 ここまで言って言うのを止めた・・・。
 「・・・・なんでもない・・・。また来るな。」
 わざわざ遥の前で、遥にそっくりな人間の話をする必要はないと思った。

 もう辺りは薄暗くなっている。何時間ここに立ってたんだろう・・・。
 夕日に目を細めながら、石段を下りていった。

 すると、めったに人の通らないこの場所に誰かがやってくるのが見えた。
 ・・・めずらしいな・・・・。
 とはいえ、大して気にもかけず石段を下りて行った。

 しかし、その影が大きくなるにつれ、足を止めずにはいられなくなった・・・。
 石段を上がってくるのは朝倉詩織だった・・・。
 どうして・・・。朝倉がどうしてこんな場所に・・・。

 その場に突っ立ってはいられなかった。
 うつむき加減に小走りで彼女が俺の方を見ると同時に横を通り抜けた。

 「あっ、あの・・・。」
 後ろで声がしたが聞こえなかった振りをして急いで自転車にまたがり、家に帰った。
 
 家に帰って夕飯を食べ、風呂に入って、授業の予習をしてみた。

 せっかく入った青葉北なんだから落ちこぼれたくないという気持ちはなかった。
 勉強でもしないと、また朝倉のことを思い出してしまいそうだったから・・・。

 一通り予習を終わらせてベッドに寝転がった。

 朝倉・・・詩織・・・か・・・。

 これ以上考える前に眠気が襲ってきた。
 こうして高校生活初日は終了した。