「で、どうだったの? 良かった?」


翌日、沙耶に捕まったあたしは、学食で尋問にあっていた。


「うっ……」


さすがにお酒が抜けたシラフな状態で、昼間からそんな際どい話なんてできるはずもない。

とりあえずその場をやり過ごそうと、あたしは目の前のホットココアに助けを求める。

真っ赤になってる顔も、この胸のドキドキも湯気で隠してしまいたくて。

あたしはカップを両手で包み込むように持ち上げ、フーと息を吹きかけてから唇を近づける。


なのに沙耶は追い討ちをかけるように、そんなあたしの耳元で囁いた。


「……っちゃった?」


「わわわっ……あつっ……」


もぉ……へンなこと急に言うからココア、こぼしちゃったじゃない!

あたしは熱さでジンジンする人差し指をそっと唇にあてた。


その瞬間、昨夜の記憶が甦ってくる……。

この指先にも彼の口の中の熱や滑らかな感触がまだ残っている。

指の間を舌先で刺激された甘い感覚も……。


「もぉ、ヘンなこと言わないでよ」


あたしは、強く指を握り込むと、沙耶をキッと睨んだ。

もう耳まで赤くなってるのは自分でもわかっている。


「だって気になるじゃん! で、どうだったのよ?」


沙耶はさらに身を乗り出すと、またあたしに耳うちした。


「……ったの?」


「だからっ!」


あたしはダンッとテーブルと叩いて立ち上がった。


「イったとか、イってないとか! そんなこと恥ずかしくて言えるわけないでしょ!」


あたしはハッとして周りと見渡す。

ここは女子大。

いくら女の子ばかりだとはいえ、さすがに周りの視線が痛かった。


「イったんだ……」


沙耶は一瞬ポカンとあたしを見上げると、クックッと肩を震わせて笑った。


あたしは力が抜けてストンと椅子に腰を降ろした。


「おめでとー」


沙耶はニヤニヤ笑って、真っ赤になったあたしの頬をペチペチと撫でた。