唇が触れた瞬間、背筋に甘い刺激が走る。


「冷た……外寒かったんだな」


すぐに離れてしまった唇が名残惜しくてあたしはそっと目を開けた。

目……うるうるかも……。


「うん……あっためて……くれる?」


口にしたとたん、後悔した。

今日のあたしはどこかおかしいのかな。

なんでこんなに大胆なんだろう……。

急にどうしようもなく恥ずかしくなって、真っ赤な顔して口をパクパクさせる。


卓巳君はニマッって笑うと「どうしたの? なんか今日……エロいね」そう言って、あたしの髪を頬に沿ってかきあげる。

そして、またあたしの唇を奪った。


さっきよりも……ずっと深く、深く……。

卓巳君の息が……熱があたしの中に入り込んでくる。

頭がぼんやりしてきて、もう立っていらんない。


ひざがガクガクしてきて崩れそうになった瞬間、絶妙なタイミングで腰に手を回された。


そしてさらに引き寄せられる。


いつも思うけど……こういうキスってどのタイミングで息をすればいいのかわかんない。

鼻ですればいいのかな?

でもなぜか上手くいかなくって、あたしはだんだん苦しくなってくる。

思わず手に力を入れて卓巳君の胸を押した。


「ふぁ……」


ほんの少し離れた唇の隙間からようやく酸素を取り入れる。


「プッ……なんで息止めてんの」


卓巳君はそんなあたしの様子にクスクス笑ってる。


「だって……」


――ぐぅううううううう


その瞬間、この甘い雰囲気を壊すようなかっこ悪い音が鳴り響いた。