〈奈留side〉


「じゃあ…雅志。
行ってきます。」


パソコンのデスクトップ画面には…愛する雅志とのツーショット写真。
その中にいる貴方に、こうして話しかけてから…出かける毎日。

大分…そんな日々にも慣れつつある。


車で20分ほどかかって、いつも研修に行っている動物病院に到着。

看板犬のパピヨン、チャッピーがいつも迎えてくれるんだ。


「おはよ、チャッピー。」


「ワンッ!!」


しっぽを振って、私に甘えてくるチャッピー。

チャッピーが甘えてきた人には、いいことがあるっていうのが、この動物病院のちょっとしたジンクス。

何かいいこと…あるかな。

そう言って、いつものように、研修医としての講義やら実習に参加する。


「実は…本日のみ、日本から、私の講義を聴きに来ている人がいますから、しっかりやっていてくださいよ?」


そう言われて、集中出来なかった。

日本って言葉に反応して、雅志のこと…思いだしちゃうんだもん。


そんなワケで、私は何度も怒られた。


何よ…あのジンクス…
嘘っぱちじゃない!

そう思って、小さくため息をついてから、庭園が見渡せるベンチに座った、そのときだった。


「だぁーれだ?」


そう言われて、目隠しをされた。

え!?


「ふふ。
俺のこと…何回も見てたのに、分かんないとか…
結構ショックだったんだけどな?」