〈雅志side〉

無事散歩から戻ると、他の獣医師たちが笑顔でおかえりなさいって言って迎えてくれた。


「ただいまです。」

そう、ニッコリ笑って答える。


奈留は、男性獣医師にお疲れ様って声を掛けられていた。

照れたように可愛く笑う彼女を見ていると、ほんの少しだけ…胸が痛んだ。


女性の先輩獣医師にも言われていたが、会釈をするだけだった。


何か…あるの?

俺が散歩行く前にも何か奈留と話していたみたいだったんだけど…

ちゃんと世話が出来ているか確認するためにケージを見回ると、
ウサギがいるケージの水が極端に少なかった。


「ウサギの水、かなり少ないぞぉ。
結構水飲む子だから、多めに入れてあげて?」


「はーい。
奈留。
ちょっと手伝ってくれる?」


「あっ…!はいっ…」

まただ。

この子今日やたら、奈留に絡むなぁ。

先輩と後輩の触れ合いっていいなぁ。
見てて微笑ましいし。


なんて思いながら、呑気に休憩をしていた。


そしてコーヒーを飲み干した頃、


「ちょっと…いいですか?」

声を掛けてきたのは…奈留がまだここに来ていない頃によく一緒に仕事をしていた子。


「ん?」


「お話が…あるんです。
ついて来てもらって…いいですか?」

そう言って、連れて来られたのは院長室。


「私っ…好き…なんですっ…
雅志さんのこと…」


「…ごめんね。
気持ちは嬉しいけど…俺…動物だけに好かれている子は…好きじゃないんだ。
だから…同僚として…これからもよろしくね。」


断ったのに…晴れやかな笑顔で…ありがとうございますとだけ言って部屋を出て行った。