「ていうか君どこ見てんの?」
自分でもびっくりするくらいスムーズに声をかけることが出来た。
さっきの緊張が嘘のように。
 そして君は僕を見てこういった。
「あなたは誰ですか?」
。。。そらそうだ。いきなり僕みたいなチャラチャラした男に声をかけられたらそう聞き返すだろう。
だから僕は君に自己紹介を始めた。
なぜか君に僕の全てを知ってもらいたくて。

「水谷淳二です!いつもこのグランドでサッカーしている大学生です。趣味はサッカー。特技もサッカーです。休日は大抵サッカーしています。好きなテレビはサッカー中継です。」
。。。しまった。完璧にテンパってしまっている。サッカー好きだという事しか伝えられていない。これじゃ俺の事彼女に伝わるわけないよな。

しばらく下を向いていると。
「ふふふ。おもしろい。あなたサッカーしか私に言ってないよ。」
と彼女が話し掛けてきてくれた。
あれ?なんだかわからないが彼女が笑ってくれている。
結果オーライってことでいいのか?
でもなんだこのうれしさに似た感情。
というか心臓がもやもやする感じというか。
なにか今まで味わった事のないこの感じ。
だめだ。とりあえず彼女になにか話し掛けなければ。なんて言おう?え~と。。。。
「私ずっと空見てたの。」

彼女は僕の事を気遣ってくれたのかそう答えてくれた。
「何で空ばっかり見てるの?飽きない??」
僕の質問に彼女はこう答えた。
「空はいつも私のことを気にしてくれているの。私のことをいつも見守っていてくれるの。だから空さえ見ていれば寂しくなる事なんてないし飽きる事もないの。」
僕はさらに質問をしてしまう。
「もし寂しくなったら?」
「寂しくなんてならないわ。だって空は子守唄も歌ってくれるから。耳をすまして?空からも音が聞こえるのよ。だから寂しくないの。」

このあとの事はもう何も覚えていない。
覚えているのはたけしと入来に
「役立たず!!」
とののしられた事と彼女の時おり見せる優しい笑顔だけだった。