尊厳死。
聞いたことはあるがそこまで詳しくはない。
「尊厳死ってね。自分で死ぬことが選べるっていうか。
何も話せなくて、感情も表現できなくなっているのにただ生きている、
痛みが毎日ひどくなるのを薬でごまかして、体にたくさんの管をつけられて。
そんなことしてまで生きたくないじゃない?
だからその人の尊厳を守るために死を迎え入れるって考えなんだ。」
妃奈の説明を聞いて一応の理解はした。
でもなぜ今俺にそんなことを話したのか?
「今日亡くなった人も尊厳死を選んだんだって。家族の人たちも苦しむ姿を毎日みててその人の死を受け入れることを決めたんだって。強いよね。
淳二?私ね。ママには伝えてあるんだ。私が伝えたいことを伝えられなくなったら私の尊厳を守ってって。
だから淳二もわかっておいてほしいんだ。
私が私として存在できなくなってしまった時のこと。」
俺は妃奈が何を言っているのか全く理解できなかった。
いやもしかしたら理解をするということを体が拒否しているのかもしれない。
しばらくして、やっと妃奈の言いたいことが把握できた。
「ちょっと待って!!そんなのダメだよ!!生きているなら最後まであきらめないで生きてよ!!妃奈がいなくなったら残された人はどうしたらいいんだよ!?俺はそんなの絶対に嫌だって。」
本当に自分のことばかり考えて妃奈にはいやな思いさせてるんだろうな。
幸せにするなんて言ってた自分に腹が立つ。
「妃奈。お願いだから一緒にいてよ。そんなこと言わないで。尊厳死なんて受け入れられないよ。」
俺は精一杯妃奈に自分の思いを話した。
妃奈は何も言わずに、ただ悲しそうな目をしながら俺にやさしい笑顔を与えてくれた。
まるで心配しないでと言いたいように。
本当は死にたくないよって伝えるように。
妃奈?
あなたと一緒にいれた期間は僕の宝物です。
あなたと空を見た思い出は大事な大事な宝物です。
妃奈はどう思っているのかな?
あなたは幸せでしたか?
もしかしたら俺のことを恨んでいるかもしれないけれど。
俺はあなたのことをいまでもずっと愛しています。
世界でいちばん愛しています。