おれとたけしのそんな疑問が解決する前に、俺らが気にしていた車はたけしの車に近づいてきてウィンドウが開いた。
俺は身の危険を感じたからか、すぐに妃奈の頭を抑え、一緒に頭を低くして声を潜めた。
「たけしさんじゃないっすか!あれ?今日淳二さんはいないんすか?」
俺の嫌な予感は見事に的中しており、車はやはり後輩の車だった。
あせる俺を横目に、後輩の鋭い質問に対して、たけしはあせりながらも満点の返答をしてくれていた。
「ん?ああ、今日は淳二試合会場の近くの友達にあってるらしいから、途中で拾ったんねん。」
たけしは異常に頭が回るのが早いと再度感心する。
そんなことを思いながら妃奈の方を見てみると、妃奈は目を閉じて少し震えていた。
そらそうだよな。
絶対にばれたら駄目だって言ってたんだしな。
妃奈心配させてごめんな。
俺は、ばれないようにと祈っているかのような妃奈を見て、
妃奈がさらに愛しくなり、小さな声で話し掛けた。
「妃奈。大丈夫だよ。たけしがばれないように頑張ってくれているから。だから心配しなくてもいいんだよ。」
妃奈はおれの言葉に小さくうなずくとすこし安心したような表情で俺を見ていた。
「実は俺、たけしと妃奈が楽しそうに話しているの見て少しヤキモチ焼いてたんだぜ。」
自然と口から出たその言葉に、妃奈は何で?というような顔をして俺を見ていた。
「だって妃奈は俺だけのもんだと思ってたし、今日は俺がお前を笑顔にして、お前のために点取るんだってずっとかんがえてたんだから。」

恥ずかしい。。。一体俺は何を言っているんだろ。
こんなガキみたいにヤキモチを焼いている俺をみて妃奈が小さな声でこういった。
「淳二?」
その声に反応し、俺が妃奈の方に顔を向けた瞬間、妃奈は俺の口にキスをした。
優しい優しい天使のキスを。
そして妃奈はこう言った。
「私はずっと淳二だけのもんだから大丈夫だよ。だから今日は私のためだけに点をとってね。」


たけしごめんな。がんばって後輩の相手してくれてるのに、俺だけ幸せになってしまって。
この借りは晩御飯という形でかえすからな。。。