もう二度と、彼女に会うことはないだろうと思っていた。
「神谷くん、その調子」
「――…はい」
あの約束から数ヶ月後、煩しかったあの松葉杖からやっと卒業できた俺は担当の理学療法の古賀先生と一緒に、負傷した左足のリハビリに励んでいた。
あの日以来、定期的に病院に赴いてはいたが、一度も彼女に会うことはなかった。
約束どころか、彼女の顔さえも忘れかけていた俺は、今はこのリハビリに耐えるだけでもう精一杯だった。
「――じゃあ、今日はここまで。私は親御さんと少し話があるから、受付で待っててもらえる?」
「あ…はい」
この会話にも、すっかり慣れてしまった。
リハビリの治療が終わると、こうやっていつも古賀先生は俺の母親と治療の経過やら何やら話をする。
そして俺はというと、いつものように受付の前にある長椅子に座って、ただひたすらそれが終わるのを待つだけ。
……の、筈だった。
「――…まじかよ」
いつもとは違う光景。
俺がいつも座っている長椅子の所には、いつか見た、あのボロボロで貧弱な紙ヒコーキが置き去りにしてあった。
それを見た瞬間、あの日の記憶が俺の脳裏にまるでフラッシュバックのように鮮明に蘇ってきた。