使い慣れない松葉杖で、病院の受け付けの前にある椅子に腰を下ろすと、不意に自分に降り掛かってきた現実に落胆し、ため息を零した。




「どうなんのかな…俺」


急によぎる不安。

抽象的すぎて今まで一度も考えたこともなかったが、この状況下になってよくよく考えてみると、何一つ分からなくて、より一層不安は募るばかりだった。




「……?」


自分が座っている長椅子の少し距離があるところに、一冊のスケッチブックが置き去りにしてあった。



俺は思わず手を伸ばして、そのスケッチブックを手にした。

表紙を見る限り、名前も書いてなければ、持ち主の手掛かりになりそうなものは何一つない。


辺りも見渡してはみたものの、何か捜し物をしている人もいなければ、持ち主らしき人も見当たらない。



中を見てみれば、何かしら手掛かりが見つかるかもしれない、とは思ったものの、人のものを勝手に覗くということにさすがに抵抗を感じた。



「――っ?!」


意を決して、スケッチブックの中を覗こうとした瞬間、バッとひとりでにスケッチブックが宙に浮いた。


ひとりでに浮いた、と言うよりは、その持ち主が俺から無理矢理取り上げた、と言ったほうが正しいのかもしれない。


驚いて目を見開いたまま上を見上げると、同い年くらいの女の子が頬を赤らめ、息を荒げながら、俺から取り上げたばかりのスケッチブックを大切そうに抱えていた。