「ね、智由ねお姉ちゃんが教えてくれた通りにちゃんと作れたよ!」
「それ…っ!」
智由がやたら嬉しそうにショルダーバッグから取り出したのは紙ヒコーキだった。
紙ヒコーキを見ただけで、反射的に反応してしまった俺は、思わず声を上げてしまい、二人の視線をモロに浴びてしまった。
「…ああ、この前不幸少年君に教えてもらったのってこの為なの」
俺の発言の訳を理解した彼女は、にこやかに笑いながら付け足すように説明した。
嗚呼、成程ね。
俺と同じくらいの年なのに、どうして今更紙ヒコーキなんて、だとか思ってはいたが、その為だったのか。
彼女があの時紙ヒコーキを作っていた理由がようやく分かって清々した筈なのに、妙な違和感のようなわだかまりがまだ残っていた。
「――それじゃあ、私たちは病院に戻るけど…不幸少年君はどうする?」
「じゃあ…もう帰るわ」
「そっか。じゃあまたね」
「ばいばい、不幸少年君」
笑顔で手を振りながら、彼女たちは俺を見送った。
「―――桐谷!」
「は…はいっ!」
このままじゃ、駄目な気がして。
彼女を呼んではみるものの、そんな気持ちかだけがただ交錯するばかりで。
居ても立ってもいられない筈なのに、いざとなるとどうしたら良いのか全然分からなくて。
「――ごめん、何でもない」
何も出来ずじまいになってしまった。