「これってさ、どうしたら上手く遠くまで飛ぶのかな」
俺が来たことに気付いたのか、彼女はちらっとこちらに目をやり、視線をまた紙ヒコーキに戻すと、やけに真剣な面持ちで呟いた。
「つーか、ここまで下手だと逆にどうしてるのか聞きたいけどな」
「な…何よ、それ!」
俺の馬鹿にしたような返答が相当気に食わなかったらしく、彼女はふてくされた表情でこちらを睨んできた。
彼女がふてくされてしまうのも無理はないのかもしれないが、からかっている俺から見てみれば、そんな彼女の姿が可愛くて、また笑ってしまっていた。
「……しいなぁ、何か」
「あ?何か言った?」
「別に?あんまり私のこと馬鹿にしてるみたいだからムカつく。って言ったの」
彼女のか細い声で呟いた言葉を、俺はつい聞きそびれてしまった。
聞き直してみたが、まともに答えてくれずに、そっぽを向いた彼女が何故か異様に寂しく見えた。
「あの…、さ」
「――…どうかした、不幸少年君?」
「とりあえず…フェンス、越えるくらいの勢いで」
「……はあ?」
俺のお間抜けな発言に、思い詰めた表情をしていた彼女が眉間に皺を寄せ、目を丸くしながら、怪訝そうな顔つきで俺を見つめていた。