例えば、だ。


自分を標準として物事を見たとき、紙ヒコーキさえまともに作れない上、飛ばすことすら出来ない彼女は俺からしてみれば、尋常でないほど普通から掛け離れていると思われた。

それは、俺の視点だけではなく、他の誰かが見てもそう思われるだろうが。




「――ねぇ、ちゃんと聞いてる?」


そんな常識はずれな彼女が、紙ヒコーキを片手に突如視界に飛び込んできた。

急なことに驚いて、きょとんとしている俺に、彼女は両手を大袈裟にブンブン振って、「おーい」だとか「不幸少年君ー」だとか、彼女にしてはやけに大きな声で叫びなら、つっ立ったままでいる俺の様子を伺ってきた。




「うるせぇなぁ…ちゃんと聞いてるって」

「嘘。ずっとぽけーってしてたくせに!」

「……ごめん」


適当に相づちを打って誤魔化そうとすると、逆に責め立てられ思わず謝ってしまった。

まるで母親のように俺を叱る彼女に、少し呆気にとられながらも、何故か妙な安心感を覚えた。



そんな妙な感覚を俺に与えた張本人である彼女はというと、眉間に皺を寄せ、まるでダーツを投げる時のような姿勢で構えていた。


はたから見れば、少し可笑しな光景にフッと嘲笑を浮かべながら、俺はゆっくりと彼女に歩み寄った。