「…笑いすぎ」
紙ヒコーキを拾い上げ、相変わらず不満な顔をしながら彼女は言った。
「ごめんって。謝るよ」
「またそんなこと言って…謝る気、本当にあるの?」
「あー、無いかもな」
「…もう!」
悪怯れた様子もなくさらっと言った俺に、彼女は呆れ果て「知らないんだから!」と俺に言い捨てると、隣に置いていたスケッチブックを乱暴に手にすると、スタスタと足早に去って行こうとした。
「ちょ…っ、待てって!」
立ち去ろうとする彼女の服の裾を咄嗟に掴んで、彼女の行く手を阻んだ。
とりあえず立ち止まってはくれたものの、振り返らずにそっぽを向いたまま、彼女はひたすら俺を無視し続けた。
「ごめんて…言い過ぎた」
「……今度は、本当?」
「うん、…悪かったよ」
ぎこちない感じはしたが、罪悪感は感じていたし、冗談とはいえ、申し訳ないことをしたとも思っていた。
俺の謝罪の言葉を聞くと、気が済んだのか、さっきまで怪訝そうな表情をしていた彼女が今度は満悦そうな表情を浮かべながら、俺に微笑みかけてきた。
「じゃあ、不幸少年君。改めてご指導願います」
改まって、手にしていた紙ヒコーキを俺に渡す彼女。
ちょっとふざけて、「了解」と畏まったような口調で言ってそれを受け取ると、彼女は俺を見てにんまりと笑った。