まだ病み上がりで発展途上の左足を時々引きずりながら、辿り着いたのは病院の屋上だった。
重く冷たい扉を開けると、煩い金属音と共に、今まで薄暗かった視界が急に明るくなり、思わず目を細めた。
そして案の定、あのボロボロの紙ヒコーキに手紙を書いた張本人であろう彼女がそこにいた。
「――…あ、不幸少年君!」
扉の開けたときの音に気付いた彼女が、振り向いて俺のほうを指差し、満面の笑みを浮かべながら言った。
相変わらずの三つ編みヘアに、手にはあのスケッチブック。
完全にあの時の彼女の姿と合致している筈なのに、俺には何故かどこか妙な違和感があった。
「来てくれたんだ…!」
てけてけとヒヨコみたいに歩み寄ってきた彼女は、背伸びをして扉の前に立ちすくんだままの俺の頭をよしよしと撫でた。
そんな彼女をじっと見つめて、なお自分の中にある『違和感』の正体を模索していると、ふと目に入った彼女の包帯が巻かれていない首元を見て、やっとその正体に気付いた。
「お…お前っ、喋れんのかよ?!」
自分でも驚いてしまうほどの大きな声で、俺は目の前にいる彼女を指差しながら、思わず叫び声をあげた。