「生き生きとした緑!」
「……鬱蒼とした森」
数年前の情報誌で、
都会的な観光地として紹介されていた街。
そこに向かってみれば、
広がる景色はどう見ても、森。
しかも薄暗く、ジメッとした印象をうける
「まあ、確かにね。
なんか、囲ってるみたいだし」
街を。
そう彼は言った。
きっと、俺には見えない、中の街が見えたんだろう。
……ちゃんとあるのか。
「しっかし、怪しげだよねー。
どうする?素通りしちゃう?」
「大丈夫そうなら寄って行きたいけど、
お前から見ても怪しげなのか?」
「廃墟には見えないのに、
人が見当たらないんだよ」
俺には、木が邪魔で何も見えない。
こういう時には彼らがちょっと羨ましい。
「じゃあ、乗ったままで
とりあえず通り過ぎてみるか?
……あれ?」
視界の端を、何かが通り過ぎた。
「どうしたの?
……あ、女の子だ」
どうやら、少女が森を走っているらしい。