「こうやって、男の人を誘って
それで、私の恋人に食べさせるんです。
この辺旅行なんかで通る人が多いから、
結構簡単なんですよ」
「ジュンが引っかからなくて残念だったね」
運転席に座る彼が笑う。
あの大きな袋を、小さな体の少女が
家まで持ち帰るのは大変だろうからと
車で送ろうかと彼が提案したからだ。
俺と彼は、車で旅をしている。
行先は未定。
どこかに過ごしやすい場所があればいいな
そう彼が言ったから、適当に旅を始めた。
いつもは俺が運転しているけれど、
食事の後は彼がハンドルを握る。
「本当ですよ。
私の恋人、男の人が好きじゃなくて……
綺麗な顔の人だとまあいいんですけど」
「だから、あの人捕まえたのに、
ジュンに声かけたの?」
「はい!
でも、邪魔しちゃってごめんなさい」
申し訳なさそうに、少女は笑った。
彼女は後部座席に、
大きな袋と座っている。
「大丈夫だよ、昨日も食べたし」
「……あんまり体、減ってませんよね?」
少女は、不思議そうに尋ねた。
「俺は普通の食事も摂るし、
彼は不死身だから、
数時間もすれば戻るんだよ」
「そうなんですか。
それにしても、いいなー。
あの子、私の事は食べたくないって」
「普通はそうだろうな。
死んじゃったら寂しいし」
今のこの世界でなら、俺の体質は幸運だ。