-カラカラカラッ-

「へいっ
いらっしゃい!!」

店員の声が響く。

「こっち、こっち」

「ごめんね
カシスオレンジを」

「お前、いっつも
カシス系だよな」

「わるーございました」

ヒデはすでに
ビールを飲んでいた。

「ヒデはいつも
一足早いのよ」

「んで?何か話が
あるんじゃねーの?」

やっぱり
ヒデは分かっていた。

「…うん…えーっと…」

「…ゆっくりで
いいからな」

ヒデのそんな優しさに
たまにキュンとする。

けど、それじゃ、
前に進めない。

「…私さ…
ヒデの事、どこかで
好きだった。
ヒデって中途半端に
優しくするじゃない?
だから、期待してた。」

ヒデは私の
どうでもいい話も
聞いてくれていた。
それはどんな時も。

そして、今も。

「だけど、それだと
カナや雅也にも
悪いから
ヒデを想うのは
やめようと思う。」

「…」

「だからね…ッ…
最後に…ッ…我が儘
聞いてほしい…ッ…」