「えー何にしようかなー」
カラフルな店内、色とりどりの水着に目を輝かせる翼ちゃん。
あたしはそんな翼ちゃんの空元気を見て、心が痛んだ。
どうしてこんな時に、そんなに上手に笑って見せるの。楽しくなんて、ないくせに。
「―――蒼空、」
あたしが口を開く前に、翼ちゃんがあたしの名前を呼んだ。
“蒼空ちゃん”と、いつものように軽く呼ぶのではなくて。
真っ直ぐにあたしの瞳を捉え、きゅっと唇に力を入れた。
「お見通しかもしれないけど、私は松神朝陽の事が好き」
「……はい」
「だから今朝、嫉妬した。蒼空の事、憎いって思った」
声を震わせる事もなく、目を伏せる事もなく、淡々と言葉を並べていく翼ちゃん。
でもあたしを射るその瞳が揺れたのを、あたしは見逃さなかった。
「貴女の事、許せない」