「でも蒼空ちゃんが苦しくて苦しくてどうしようもなくなったら、その時は遠慮せずに俺たちに頼って欲しい」


「頼る…」



誰かを頼った事なんてないから、正直戸惑った。

でも、もっとみんなを信じてみようと思う。みんながあたしを信じてくれてるように。


「みなさん、ありがとうございます」



「気にすんな。つか、仲間が泣いてんの見てじっとしていられるほど、俺たちは大人じゃねーしな」


「だな」




バス内に、温かい空気が広がる。

手首に違和感を感じて視線を下げると、中村君が申し訳なさそうにそこを擦っていた。



「ごめん蒼空ちゃん…痛かった?」



さっきからずっと掴まれていた手首は、ほんのり赤く跡がついていた。

でも、痛くも痒くもない。




「全然大丈夫ですっ」


にっこり笑い掛けると、中村君も嬉しそうに笑った。