後ろから八木原君の声がして、ギクリと身体が跳ねた。


ゆっくり振り向くと、怖い顏であたしを見下ろす八木原君と目が合う。




あ、また怒られる…。そう思って、ぎゅっと目を瞑り身を構える。


だけど、次に聞こえてきたのは穏やかな声だった。




「―――それでも、いい」




予想してなかった言葉に、恐る恐る目を開ける。


そこには、優しくあたしに笑い掛ける八木原君の姿があった。




「…え、?」



どうして、そんな風に笑うの?


隠し事してるのに。

嘘ついてるのに。


どうして………?





「誰だって話したくない事ぐらいあるだろ。それをわざわざ聞き出すつもりはねぇよ」


八木原君の肩に手を置いてひょこっと顏を出しながら、橘君があたしに言う。