「……ま、とりあえず今日はもう遅いから帰れば。
次は明るいときに来い。」
「…いえ、今日来たのには
もうひとつ理由があって…。」
そう言って女は海を見渡したあと、
ゆっくりと空を見上げた。
……?
空に何かあるのか?
真似して空を見上げてみる。
俺達を照らしていた月が雲に隠れ、
虚しくもただ真っ黒な空が
広がっているだけ。
見上げたまま
女がボソッと何か
言っているようだった。
小さい声でなんと言っていたか解らなかったけど。
「もう少し粘ってみます。
それに今バス出てなくて、
駅に行けないんですよ。」
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