女が海に足を入れる直前で、 俺は女の腕を掴んでそれを止めた。 ゆっくりとその女が振り返る。 ―――全てを否定したかのように色を失った瞳で俺を見上げる。 栗色の髪に透き通るような肌をした姿は 月明かり照らされて より一層はかなさを増し、 今にも消えてしまいそうだった。 ドクン…… 胸がざわついた。 あまりにもあの頃の俺と同じ瞳をしていて、 俺は目を逸らせなかった。 .