「でもさ、ずっとそうだったじゃない」
「え?」
「その力が身につくまで、ずっとさ。
人の気持ちなんて、全然分かんなかっただろ?」
言われてみればそうだ。
この能力にすっかり慣れちゃって、忘れそうになっていた。
「そういう時、どうしてきた?
気持ちが分からなくても、できることはあったんじゃない?」
「今まで…どうしてきた?」
今までは、勘違いとか、思い違いとかいっぱいしながら、
人の気持ちを必死に読んで、それに一生懸命応えようとしてたっけ。
それで空回りして、何度も傷ついて。
それでもめげずに繰り返してきたんだ。
「きっと何かできるはずだよ」
秀くんが優しく、見守るように、力強く頷いた。
「うん」