「うっ!」
思わず顔をしかめるほどの耳鳴りがした。
陽介を見ると、同じようにただならぬ顔をしていた。
「何……?」
どこだ?
騒がしい雑踏の中で、
耳をつんざくような悲痛な声がきこえてきた。
――亮太!!
あたし達の横を、坂を転げるように、
女性が走り去っていった。
――助けて!止まって!お願いだから!助けて!
走る先には、カンカンとベルを鳴らす踏み切り。
そして、おもちゃの車に乗った小さな子供が坂を下り、線路へ飛び出していた。
――助けて!!
その瞬間、
持っていた自転車を放って、陽介が勢いよく走り出した。